KDDIがテレワーク・デイズ2019期間中の通勤者数の調査結果を報告しています。au利用者の動態データを利用したものです。

携帯電話を利用することで、こうした大規模な社会データを入手できることも注目ですが、もう一つ、事前アンケートが行動促進要因になっているという発見にも注目したいです。

テレワーク・デイズ2019の認知度や利用意向に関する事前アンケートも実施した。この結果、事前アンケートによる心理効果を活用することで、さらにテレワークを促進できることが分かった。

情報源: 通勤者が124万人減少、KDDIが「テレワーク・デイズ2019」の効果を測定 | IT Leaders

アンケートへの回答が行動を促す

例として紹介されているのが、50代男性の場合。アンケートの実施をした群においては、実施しなかった被験者より、1.7倍の実施率になったという。なおかつ、実施に賛同・共感するかという設問を入れておくと、入れない場合と比べて1.3倍の実施率になったと。

これはおそらく、アンケートに回答したことで、テレワークが「自分に関係のあること」という意識を持つものになり、なおかつ、賛同・共感への設問が「自分も取り組むこと」という意識づけにはたらいたのではないかと思われます。

もっとも意識づけだけなら、チラシや告知でも十分だったかもしれません。アンケートの場合、それに加えてもうひとつ、力を持った理由がありそうです。

自分ごと化する「ナッジ」

テレワークという言葉は、オリンピックイヤーを前に、都心の混雑対策のためということもあって、人々に浸透するようになってきました。

一方で、「どこか別の企業の話」といった印象を抱いている人も少なくないことでしょう。今回のアンケートによる効果は、そんなときに「自分ごと化」するための方法のひとつを教えてくれます。

アンケートに回答するということは、自らの行動を伴う行為です。そこが単に「あなたもしよう」というチラシを受け身でもらうのとちがうところです。クリック一つでも良いので、行動を伴ったことが、次の行動を生んでいるのです。

そんな、小さな心理学的な仕掛け(ナッジ)だったと言えるのではないでしょうか。

一貫性の原理を利用する

心理学に「一貫性の原理」として知られる人間の特性があります。ある行動をとると、それ以降、その行動と一貫性のある態度をとるというものです。

人は自分は正しいと信じたいものですから、前の自分を否定する行動はとりづらいものです。ですから、「テレワークについてのアンケートに回答する」という行動が、その後の「テレワークをする」という行動という一貫性要求につながっているのではないかと推測します。

記事には「賛同・共感する」という設問への回答結果に触れられていません。「賛同する」と回答すれば当然、その後の行動もとるというのが自然です。しかし、たとえ「よく分からない」と答えたとしても、答えたという行動が、その後の行動の一貫性を要求するのです。

小さな行動を促すことで、その後の大きな行動につなぐ。私たちの暮らしの中で、応用できる場面もあるのではないでしょうか。

Standard Rules:最終行動を促す
Alternative Rules:最初の一歩を促す

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