2019年9月14日(土)、熊本県で、県内のバスや電車が無料になるという大規模な実験が行われました。

公共交通の利用者増加だけではない効果を、ビッグデータ分析からはじき出しているのがユニークなところで、経済効果は5億円と。

単に「大勢にバスを利用いただいた」というだけではもったいない話です。そこで、熊本大学の溝上章志教授や熊本市のサポートを得て、ヤフーのデータソリューションサービスのチームや、交通分析を得意とするトラフィックブレイン社(東京都千代田区)らがビッグデータの分析を行いました。

情報源: 県内バス全無料化「1世帯月1000円負担で可能」 熊本で1日やってわかったこと(乗りものニュース) – Yahoo!ニュース

地方を悩ます公共交通問題

その昔、地方バスや鉄道のローカル線は人々の足でした。しかし、車社会の発達とともに、公共交通を利用される人は減少。多くの地方で便数が減少、利用するのは通学生のみといった状況が生じています。

一方で、高齢化社会を迎え、高齢者の足として公共交通の必要性が指摘されます。対策として、市営での巡回バスの運営や、オンデマンド交通の導入などが進められています。将来的には自動運転に期待する声も少なくありません。

公共交通をどう維持するか、どの地方でも抱えている課題です。

無料化するというアプローチ

そうした中で、熊本県が行った無料化実験は重要です。日本では運賃収入を原資として運営するという考え方が基本ですが、実際には赤字路線が多く、補助金で補てんするところも少なくありません。ならばいっそすべて公的資金で運営してはどうか。これは一種の逆転の発想でしょう。

公共交通を名前の通り、公的なインフラとしてとらえる。そうすることで、無料化に対する市民の理解も進みます。エストニアの首都タリンでは実際に無料化されており、ヨーロッパの他都市でも検討が進むという記事もありました。日本ではどうでしょうか。

無料化が地域の活性化につながる

今回の実験が、無料化することによる副次的効果を明らかにしたところにも価値があります。交通手段としてだけではなく、社会を支えるという視点から市民の理解を深めることにもなるからです。

利用者はふだんの土曜日の2.5倍になったそうですが、その結果、中心市街地の来訪者数は1.5倍に、渋滞の長さは59%減少したといいます。経済活性化とともに、地球温暖化対策にもなっている。

一日だけでは分かりませんが、無料で利用できるとなると、今後も移動の選択肢としてのぼる可能性はありそうです。他の地域でもこの無料化実験を検討してみる価値は十分あるのではないでしょうか。

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